新田菜穂子の壊された日常 10
しみるけいさんによる写真ACからの写真

≪ 二、なんでここにいるんです? 6 ≫



「そ、そんな! 菜穂子さん酷いですよ!」
「酷くて結構。さあ、何があったか白状しなさい」
「う……」


 彩香が呻くのをわざとらしく頬杖をついて見守る。だが、そこで横槍が入った。


「まあまあ。弟子の彩香君をからかうのはそれくらいにして。
お昼休みもうすぐでしょう? よかったら俺とランチでも行きませんか?」
「ラ?!」


 せっかくの楽しみを邪魔されただけでなく、ご飯まで誘ってくる一真の厚顔無恥っぷりに、菜穂子は瞬間絶句する。


「……ええっと、ごめんなさい。お昼は彩香さんと約束してるので無理なんです。
ね! 彩香さん?」


 強引に話を向けると、彩香が目を白黒させて首を傾げた。


「あれ? おかしいなあ。彩香君はこれから会社に戻るんだったよね?」


 一真が笑顔を張り付かせたまま彩香を見る。


「あ、はい」


 彩香が戸惑いつつ頷くと、一真が畳み掛けるように彩香へ問いかける。


「なら急いだ方がいいんじゃないかな?」


 水を向ける一真へ彩香が同意する。


「ですね」


 彩香が肘に置いていたビジネスバッグを肩にかけ直した。

まずい。

このままでは彩香が帰ってしまう。菜穂子は慌てて彩香の手を取った。


「彩香さん。お・べ・ん・と・う」


 この際あからさまなものであっても構わない。

とにかくここで彩香を帰すわけにはいかないのだ。

瞳で言うことを聞け、と脅すと、彩香の左眉が跳ね上がった。


「う!」


 彩香が再び呻く。どうやらこちらの意図が正確に伝わったようだ。握っていた手を緩めると、彩香が一真へ向き直った。

一つ前を読む   小説の部屋に戻る   次を読む





オープニング背景画像: acworksさんによる写真ACからの写真