≪ 二、なんでここにいるんです? 8 ≫
「一体何がどうなってるんです?」
腕を組んで睨んでくる彩香を前に、菜穂子は頬を掻く。
「あーええっと、話せば長くなるのよ」
どうやったら手早く説明できるだろうか。頭を巡らせていると、彩香が呆れたように肩を落とした。
「とりあえず田中さんにこれ渡しちゃって、ランチに行きましょうか」
彩香の予想外な提案に、菜穂子は目を瞠る。
「え? いいの? 急ぐんじゃないの?」
「ここから会社が近いのは本当ですし。こんな感じの菜穂子さんをほっておけませんしね」
微苦笑で応じてくる彩香に、菜穂子は手を合わせた。
「ありがとう。正直混乱しててさ。恩に着るわ」
「まあ、お互い様ってやつですよ」
くすりと悪戯っぽく笑う彩香へ、人は変われば変わるものだ、と菜穂子は
内心でほんの少しだけ彼女を羨ましく思った。