新田菜穂子の壊された日常 13
しみるけいさんによる写真ACからの写真

≪ 二、なんでここにいるんです? 9 ≫



「プロポーズされた?! 師匠にですか?!」
「ええ……」


 目を剥いて詰問してくる彩香の前で、菜穂子は頷きながら一口紅茶を口に含んだ。

店特製のブレンドティーの甘く芳醇な香りが口腔内に広がり、鼻腔をくすぐる。


(美味しい……)


 ここのお茶はいつ飲んでもほっとする。

しばし浸っていると、前方から溜め息が聞こえてきた。


「はあ……。そういうことだったんですか。
変わってるとは思ってたけど、思った以上に大胆ですねぇ、師匠」


 感心しきったようなその声音に、菜穂子は現実に引き戻されむっとする。


「そんな他人事みたいに」


 渋面を作って文句を言うと、彩香が腕を組み思案顔で答える。


「いや、でも、師匠いい人ですよ。確かに変わってますけど」
「いい人だとか悪い人だとか以前よ。そもそも私、一目惚れとか信じないタチだし」


 紅茶に少しだけミルクを入れる。

白く広がっていく輪を見ながら応じると、彩香の驚いたような声が聞こえてきた。

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オープニング背景画像: acworksさんによる写真ACからの写真