≪ 二、なんでここにいるんです? 10 ≫
「そうなんですか?」
「そう。前彼だって結構長いこと友達だった人だし」
さらっと告げると、意外、とでも言わんばかりの返答があった。
「へー」
「何よ、おかしい?」
半眼で問うと、彩香が首を横に振る。
「いいえ、全然。でも菜穂子さんの恋バナって初めてだったから」
彩香の言葉に菜穂子は吐息する。
「私だって恋人の1人や2人いたことくらいあるわよ」
頬杖をついて外を眺めると、商店街の賑やかな細道が目に入った。
「そりゃそうでしょうけど」
彩香がそこまで声にして黙り込む。
何が言いたいのだろう。
先を促すために視線を戻すと、彩香が小さく手を打った。