新田菜穂子の壊された日常 15
しみるけいさんによる写真ACからの写真

≪ 二、なんでここにいるんです? 11 ≫



「あ、わかった。もしかして師匠に言った好きな人って前彼のことですか?」


 彩香の問いに、菜穂子は首肯する。


「そうよ。向こうがアメリカに行くからついてきてくれ、って言われてね。
でも私は旅行以外でも外国に行くなんて考えられないから断ったの。それでおしまい」


 軽い口調で説明するも、彩香から出てきた言葉は意外にも真剣なものだった。


「待ってるとかは言わなかったんですか? 遠恋って手だってあるでしょうに」


 不満げな口調に、菜穂子は手を横に振って否定する。


「それはさすがに向こうが可哀想だよ。知らない国に1人なんて寂しすぎるし、
遠恋でせっかくの出会いを無駄にさせるわけにはいかないじゃない?」


 肩を竦めてみせながら彩香が納得した様子はなかった。

それどころか、火がついたように反論してくる。


「好きならいいじゃないですか。
結婚で海外は無理でも遠距離で愛を深めることはできたはずでしょう?」
「それは理想論」


 菜穂子は彩香の言葉を一刀両断する。


「けど」


 菜穂子は食い下がってくる彩香の目を見つめた。

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