新田菜穂子の壊された日常 21
しみるけいさんによる写真ACからの写真

≪ 二、なんでここにいるんです? 17 ≫



「一度お話してみたらどうですか? それできっぱり断った方がいい気がします」


 彩香の提案に、菜穂子はかぶりを振る。


「いやよ、面倒臭い。
それにきっぱりとだったら会った時にすでに断ってるもの。
それ以上にどう断れっていうのよ」


 こんなにしつこい男性には今まで出会ったことがない。

頭を掻き毟りたい衝動と必死で闘っていると、彩香ののんびりした声が聞こえてきた。


「んーいや、まあ、そうですよねー」


 思案顔で弁当の上から頬杖をつく彩香へ、菜穂子は胸に残る苛立ちを吐き出す。


「そうそう。最近あの人のことばっかり! 本当に嫌んなっちゃうわ、まったく!」


 憤慨しながら腕を組むと、彩香が怪訝そうな声を上げた。


「菜穂子さん?」


 戸惑ったようなその声音に、菜穂子は視線を彩香へ向ける。

まじまじと見つめてくる瞳とぶつかり、菜穂子は渋面を作った。


「何よ?」
「あ、別に。なんでもないです。はい」


 慌てたように右手を横に振ってくる彩香を前に、菜穂子は首を傾げる。


「変な彩香さん。さては寝不足でしょ。睡眠だけはちゃんと取ったほうが良いらしいわよ?」


 年上らしくきちんとアドバイスをしたのに、当の彩香は何故か肩を落とした。


「ですね。気をつけます」


 何か言いたげな溜め息を吐く彩香を見ていると、自分が悪いことをした気分になってくる。


(私、なんか変なこと言ったっけ?)


 だが、どう考えても思い当たる節はなく、
菜穂子は呆れ顔の彩香の前で目を瞬かせることしかできなかった。

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