新田菜穂子の壊された日常 32
しみるけいさんによる写真ACからの写真

≪ 三、たまたま偶然見てただけ、だからね! 11 ≫



「直己からです。以前彼女と喧嘩したことで落ち込んでいた時に
『いつも一緒にいたいって奇跡みたいな想いよ』と励ましてくれた、と」


 そんな小っ恥ずかしいことをあの時の自分は言ったのか。穴があったら入りたい。

菜穂子は負けるものかと奥歯を食い縛り、必死でポーカーフェイスを装った。


「……別に私自身のことを元にして言ったわけじゃありませんから」


 視線を逸らして告げると、一真が畳み掛けるように尋ねてくる。


「でもまだ好きなんでしょう? さっきそう言ったじゃないですか」


 珍しく声を荒らげてくる一真に、菜穂子は台詞をかぶせるように本音を語り出していた。


「私だって好きで彼に恋してるわけじゃありません。
これでも何度も諦めようとしたんです。
でも、心がそこから動かないんだからしかたないじゃないですか」


 胸の内を吐露するつもりはなかったのに。


(悔しい……)


 唇を噛み締めていると、優しい声音が前方から聞こえてきた。


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オープニング背景画像: acworksさんによる写真ACからの写真