≪ 四、私の顔、なんか変? 1 ≫
「久しぶり」
待ち合わせのオープンカフェに入ると、さっぱりとしたスポーツ刈りの黒髪に、
かっちりとした濃紺のスーツに身を包んだ田宮が席を立った。
握手を求めてきたので咄嗟に手を振って断ると、決まり悪げに手を引っ込め頬を掻く。
アメリカ生活も長くなり、自然に身についてしまったのだろう。
さっと椅子を引いてくれエスコートしてくれるところなども、
昔より色々と気が利いている。
(付き合ってる頃はゴリゴリのスポーツマンって感じだったのにね)
くすりとしながらランチの注文を終えると、菜穂子は話を切り出した。
「ご結婚おめでとう」
「ありがとう。……どうかしたか?」
自分が彼の変化を感じているように、田宮もこちらの変化に気づいたのだろうか。
ともあれ、これまでのことを説明しなければならない。
そうでなければ、前に進めないのだから。
「ん? あー、んーとどっから説明したらいいのかしら……ええっとね……」
どこから話したらきちんと伝わるのだろう。
逡巡していると、なんだ、と田宮が背もたれに身を預け、天を仰いだ。