≪ 四、私の顔、なんか変? 5 ≫
「その顔だよ。その。俺の前でそんな顔したことなかったじゃねぇか」
田宮の発言に、菜穂子は思い切り眉間に皺を寄せる。
「え? どんな顔よ?」
「言ってやんねぇよ。自分で考えろ。あー会って損した。ホントにやんなっちまうよ」
腐れきった顔で不愉快げに吐息する田宮を見て、
何故か分からないが申し訳なさが溢れ出た。
「……ごめん……」
半ば無意識で頭を下げると、深い溜め息が聞こえてきた。
「ホントだよ。俺が振られに来たみたいじゃねえか。あー、ヤダヤダ」
その後も恨み言を連ねる田宮の話にその度に頭を下げ続けたが、
頭を擡げてくるのは違う疑問ばかりで。
つまり……。
(私、一体どんな顔してたんだろ?)