≪ 四、私の顔、なんか変? 11 ≫
午後の休憩が終わり、再びカウンター仕事に戻る。
午後になっても相変わらず美術館の客はほとんどなく、
菜穂子は愛用のノートパソコンを取り出した。
館長の田中から頼まれていたチラシ作りに取りかかる。
だが、どんなに集中しようとしても、出てくるのはあの一真の面ばかりだった。
「はあ……」
自然と溜め息が出てしまうのはしかたないことだ。
だが、それに対しリアクションが返ってくることは当然ながらしていなかった。
「どうしたんです? 新田さん最近溜め息ばかりな気がしますが」
驚いて振り向くとそこには田中館長の姿があった。
田中雅和(たなかまさかず)、彩香の恋人であり、菜穂子の上司である。
見ると田中が、お気に入りのグラスに自前で作ったアイスコーヒーを手に、小首を傾げている。
「何かあったのなら話聞きますよ。新田さんには彩香さんのことでお世話になってますし」
「はあ……」
菜穂子は頬を掻き視線をPCに移した。