新田菜穂子の壊された日常 5
しみるけいさんによる写真ACからの写真

≪ 二、なんでここにいるんです? 1 ≫



 翌日の11時30分過ぎ、いくつかのメールを出し終えたところで入口の自動ドアが開いた。


「こんにちは」


 入ってきたのは、この美術館の元常連で、

今では田中館長の彼女である遠藤彩香(えんどうあやか)だ。


「あ、いらっしゃい。彩香ちゃん。……と、え?!」


 ショートカットに紺のパンツスーツ姿をした彩香の後ろから、

ひょろりした体躯の男性がついてきて、菜穂子は笑顔が瞬時に固まるのを自覚した。


「こんにちは、菜穂子さん」


 柔和な微笑みとともに近づいてきた男性は、昨日無茶な要求をしてきたあの吉村一真だった。


「ど、どうしてあなたが彩香ちゃんと一緒にいるのよ!」


 両手を鳴らして立ち上がり抗議すると、一真が笑顔のまま彩香を見遣る。


「それは……」


 一真の視線を受けた彩香が少々混乱した様子を見せつつこちらを向いた。

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オープニング背景画像: acworksさんによる写真ACからの写真