≪ 四、私の顔、なんか変? 18 ≫
「そうですよ。だってちょっと前まで彩香さんに告白したいけどできない、
って散々ウジウジしてたじゃないですか」
菜穂子は意趣返しだとばかりに言い募る。
だが、田中の方は堪えた様子もなく、ひたと瞳を見据えてきた。
「だからこそわかるんですよ。菜穂子さん。今を逃したら明日はありませんよ?」
「ま、真顔で言わないでくださいよ」
いつも頼りないと思っていた人物から真面目な口調で問いかけられ、
菜穂子はうろたえる。
(そんなことわかってるわよ)
だからと言って、どうすればいいのだ。相手は会わないと言っているのに。
小さく唸っていると、田中が眉尻を下げてくる。
「そりゃ真剣なんだからしかたないでしょう。
そんなことより、どうするんです? 連絡するんですか? しないんですか?」
有無を言わせない調子で決断を迫られ、菜穂子は勢い頷いた。
「わ、わかりました。しますします」
「今すぐに、ですよ?」
念押しされ、ぶんぶんと首を縦に振った時だ。
菜穂子は肝心なことを忘れていたことに気がついた。