新田菜穂子の壊された日常 55
しみるけいさんによる写真ACからの写真

≪ 四、私の顔、なんか変? 20 ≫



「そりゃそもそも直接お返事した方がいいじゃないですか」
「いや、でもですね。私まだ自分の気持ちがはっきりとしているわけじゃ……」


 さも当然だと言わんばかりの田中に菜穂子は我ながら歯切れの悪い答えを返す。

田中が腕を組み唸った。


「そんなこと言ってると、チャンスが逃げていっちゃいますよ?」
「ま、まあ……」


 真意を探るような瞳で見据えられ、菜穂子はどうにか視線を外す。

だが、顔を背けた途端、嬉しげな田中の声がした。


「あ、連絡来ました。『菜穂子さんが本当に望んでくれるまで待つ』だそうですよ」
「そ、そうですか……」


 菜穂子はほっと胸を撫で下ろす。

やはり一真はわかってくれているようだ。

そう思うと、どうにもこそばゆい気持ちになってくる。

胸の内を悟られぬよう頬を掻いて誤魔化すと、田中が不満げに片眉を上げた。


「あからさまにほっとしてますね」
「い、いや、だって……」


 本当はそれだけではないのだが、正直に言うつもりはない。

何かいい言い訳はないかと逡巡していると、田中が盛大に溜め息を吐いてきた。

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