≪ 二、なんでここにいるんです? 4 ≫
「う、うん。まあ、そうだけど。
それよりも性格がエキセントリック過ぎる気がしないでもなくて……」
彩香と目線を合わせないまま曖昧に答えると、彩香が疑問符を浮かべてくる。
「そうですか? それだったら田中さんもあんまり変わらないと思うんですけど……」
確かに、と菜穂子は内心で頷いた。
彩香の彼氏でありこの美術館の館長でもある田中智(たなかさとし)は、
近所でも変わり者で有名だ。
だが、長いこと彩香に片思いしている様子を眺めていた菜穂子にとってみれば、
田中館長はそんな大層な人間でもない。
「あの人、いや、あなたの彼氏さんはエキセントリックっていうよりヘタレでしょ」
率直に告げると、彩香が不満げに呻いた。