お狐様が嫁になれと言い出しました 14
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≪ 第二章 待ち望んだ日 4 ≫



「清美、艶子様は九十九神様なんだよ。古くからお狐様同様に社を守ってくださっているんだよ」
「清美は孝一さんや園子さんの血を濃く受け継いだんだね。
私や一正は視鬼ではないから残念ながら自分から見ることはできないんだよ」
「なーに、清美の封印も解けたことだし、神社の中だけだったら正子でも我らの姿が見られるから安心いたせ」

 悲しげな顔を見せていた正子に笑みが戻った。

(正子の笑い方は清美そっくりだのぅ)

 天は新しい発見に満足しながら頷く。すると突然、目の前に白髪混じりの孝一の頭が入ってきた。

「ばあさん、いくらお狐様が見えるからって浮気は駄目だぞ。浮気は」
「もうさっきからなんですか。二言目には浮気、浮気って。そんなことしてないでしょう」
「ちょ、ちょっと待って、ストーップ!」

 再び始まろうとした孝一と正子の夫婦喧嘩を止めたのは、清美の戸惑った声だった。

「何和んじゃってるのよ! 今は、私が話してたんでしょう。ていうか視鬼って何?」
「見えざるものが見える人のことよ。お母さんも昔から霊感強くてねー。小さい頃は困ったわ」

 園子があっけらかんと言い放つ。言葉とは裏腹にまったく困ったようには見えなかった。
それどころか、どちらかといえば楽しんでいたのでは、と邪推したくなるほどだ。
 園子がここへ嫁いできてから何年も経つが、
未だに天は彼女の腹の底すべてを見通すことができていなかった。

(恐ろしいメスが嫁にきたものだな)

 それに引き換え清美はわかりやすい。顔を真っ青に染め、今にも倒れてしまいそうだ。

「わ、私がお化けとか幽霊の類が苦手なの知っててそんな冗談言ってるの?
ねぇ、そうなんでしょう。や、やめてよ」

 清美が目を潤ませ、すがるような眼差しで周囲を窺う。
ひだまりのような笑顔も可愛いが、その庇護欲をそそる顔も甲乙つけがたい。

(だが、清美は何か勘違いをしておるな)

 ここは一つ夫となる自分が優しく諭してやるべきだろう。天は、清美の肩へ優しく手を乗せ、語りかけた。

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