お狐様が嫁になれと言い出しました 17
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≪ 第二章 待ち望んだ日 7 ≫



(まさか、あそこが市のような場所だったとはのぅ)

 自分への供物をあの場所で購入しているとなると、これは由々しき問題かもしれない。

「その商店街とやらがなくなってしまうと、われの酒もなくなってしまうのか?」
「そんなことはごさいませんよ。私たちも食べないわけにはいきませんからね。
少し遠くはなりますがデパートへ行くようになるでしょうね」
「そうか」

 園子と話の花を咲かせていた正子が朗らかに笑う。それならば安心だ。天は内心でホッと息をついた。
 ふと、こちらをじっと見据える視線に気づき顔をあげる。何か言いたげな顔をした孝一と目が合った。

「なんだ?」
「いえ、清美じゃないですができれば商店街には存続していて欲しいのですがね」

 清美に好かれようと懐柔するつもりか。天は、ふん、と孝一の目線を鼻息で蹴散らした。

「言ったではないか。清美がわれの嫁になれば考えてやると。
まぁ、祭りをやったところで商店街とやらの活気が戻るとは思わんがな」

 孝一が、やれやれと言わんばかりに肩をすくめる。

「何度も言いますが、清美の意思がない限りお狐様の嫁へは行かせませんよ。
そうではなくて、あのデパートが建ってから少し変な感じがするんですよ」
「変?」

 それは普通の人間には感じ取ることのできない物の仕業だということなのだろうか。
天は孝一の真意を探ろうとする。だがその前に、彼自身によって話を畳まれてしまった。

「まぁ、私の勘違いかもしれませんがね」

 一度、商店街へ足を運んだほうがいいのかもしれない。
商店街がどうなろうと構わないが、人ならざるもののせいで清美たちに何かあっては困る。
この際、自分の目で確かめに行くのも悪くないだろう。天は残っていた茶を飲み干し、席を立った。

「おや、お出かけですか?」
「ああ、ちょっと酔いさましにな」

 お酒など召しあがってないのに、と孝一がにやにやした顔つきでこちらを見てくる。

「う、うるさい! 茶に酔ったのだ、茶に」

 上手いごまかしを見つけることもできず、天は喚きながら商店街へ意識を向けた。

「いってらっしゃいませお狐様。よろしくお願いいたします」

 食卓から外へと景色が移行する瞬間、頭を下げる孝一の姿が見えた。

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