お狐様が嫁になれと言い出しました 21
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≪ 第三章 人ならざる者たち 1 ≫






(今日は朝から散々だったなぁ)

 清美はため息とともに教室の机に突っ伏した。
 変な物が見えるのは家の中だけの現象だと思っていたが違っていたらしい。
清美は指折り数えながら今日あった出来事を振り返った。

(艶子さんとお狐様は家の中だったからいいとして。
学校へ着いた早々昇降口の前にある銅像に挨拶されたでしょう。
それでパニックのまま授業を受けたら、先生が板書するたびに笑うのをこらえている黒板と目が合って。
見つめ合ってるのも嫌だったから目を逸らしてたら先生に怒られて今に至る)

 本当に怒濤のような一日だった。清美は容量を超えた脳を冷やすように額を机にあてる。
しばらくして、悲鳴にも似た笑い声が耳に入ってきた。

「うひゃひゃひゃ。ひー、そんな激しくはやめてーな』
(あと、あれね)

 顎で顔を支え、黒板のほうへ目線をやる。掃除当番が黒板消しをクリーナーで掃除しているところだった。

『あかんって、脇腹は駄目や言うたやろー! うっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ』

 言葉とは裏腹に恍惚そうな表情を見せる黒板消しに、清美は口角筋を引きつらせた。

(それもこれもあいつのせいよ! ほんと腹立たしい)

 我が物顔で朝食を食べていた自分よりも年下に見える狐の神様の顔が脳裏をよぎる。

(神様だかなんだか知らないけどあんな狐の嫁になるくらいならお祭りなんてしなくていいもん。
別の、お祭り以上の催し物を考えてやるんだから)

 清美は決意を新たに、拳を握りしめた。

「清美。まだ帰らないの?」

 背後から聞こえてきた声に振り返る。
 クルンと内巻きにされた栗色の髪を肩で揺らし、首をかしげる親友、田沼リカコが立っていた。
 全体的に小さく華奢だが出るところは出ているというなんとも羨ましすぎるスタイルの持ち主だ。
リカコ自身は気にしているらしいが、こちらにしてみたらチャームポイントにしかならない少し潤んだ
たれ目で見つめられ、清美はうっとりとした。

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