お狐様が嫁になれと言い出しました 22
acworksさんによる写真ACからの写真

≪ 第三章 人ならざる者たち 2 ≫



(やっぱ、リカって可愛いよなー)
「清美? 聞いてる?」

 眉をひそめ訝しげに見てくるリカコに、自分の世界に入りこんでいた清美は我に返った。

「ご、ごめん。今、支度する」

 すでに帰宅準備を終えたリカコに清美は慌てる。机の脇に置いてあるカバンを膝の上に乗せた。

「それより昨日はごめんね」
「もう、またそれ? それは朝も聞いたよ」

 清美が片づけながら口を開けば、リカコは可笑しそうにクスクスと笑う。
もう気にしてないよと言わんばかりの素振りを見せるリカコに対し、
清美は何度謝っても足りない気がしてならなかった。
 せっかく彼女が作ってくれたチャンスを不意にしてしまった挙げ句、尻拭いまでさせてしまったのだ。
清美は自分の不甲斐なさに俯く。

「まぁ、昨日のはしかたないよ。また二人で帰れるようにキッカケ作ってあげるから元気出して」

 リカコの小さな手が頭を優しくなでてきた。その温もりが自分の中にある罪悪感を溶かしていく。

「リカ! 愛してるー」

 清美は感極まり、リカコに抱きつこうとする。が、彼女の素っ気ない声音がそれを阻んだ。

「はいはい。ありがとう。それより手を動かして、手を。清美だけだよ。机の上に教科書出てるの」
「は、はい! ただ今」

 腰に手をあて淡々と言い募るリカコの姿がなぜか静かに怒る母を彷彿とさせ、清美は背筋を伸ばした。

「もしかして今日はそれを気にして元気がなかったの?」
「え?」
「だって今日は朝からぼんやりしてるっていうか、心ここにあらずっていう感じだったよ?」
「そうだった?」

 まったくの無自覚だっため戸惑いながらリカコを見ると、彼女はゆっくり首を縦に振った。
 そんなに変だっただろうか。清美は朝からの自分の行動を振り返ろうとする。
だが、リカコが耳元で囁いた爆弾が思考を停止させた。

「うん。佐藤君も心配そうに見てたよ」

一つ前を読む   小説の部屋に戻る   次を読む





オープニング背景画像:MICHYさんによる写真ACからの写真