お狐様が嫁になれと言い出しました 23
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≪ 第三章 人ならざる者たち 3 ≫



「うん。佐藤君も心配そうに見てたよ」

 清美は息を飲んだ。親友の顔を凝視すれば、瞳を蒲鉾のように曲げている。

「もう! 今のは嘘でしょう」

 からかわれていることに気づいたとたん、頬が熱くなる。

「本当だってー。あ、噂をすればなんとやらってね。ほら」

 リカコの視線を追うと、良人が近づいてくるのがわかった。

「邪魔者は先に帰るね。バイバイ」

 リカコは軽くこちらの肩を叩くや、さっさと教室を出て行ってしまった。

「え、ちょっ、リカ……」
「あれ、田沼さん帰っちゃったの?」

 こちらに近づいてきた良人が少しがっかりした表情を見せる。やはりリカコのことが好きなのだろうか。
まだ推測の域を出ないが、彼の言動を考えるにあながち間違っているとは思えず清美は切なくなった。

「清美ちゃん?」

 清美は不思議そうな顔をした良人へ、痛む胸を宥めながら笑みを向けた。

「ううん、なんでもない。それよりリカに何か用だったの?」
「あっ、違うんだ。特に用ってわけでは。昨日商店街を案内したとき興味深そうに見てたからさ。
商店街の常連さんになってくれたらなぁって」

 良人が照れくさそうに頭へ手をやる。その表情はリカコが気になってしかたないと語っているようで、
清美は俯きそうになる自分を抑えこみながらはしゃいだ声を出した。

「客引きってやつだね。じゃあ、私もリカが常連になるように手伝うよ」
「ありがとう。でもほどほどにね」
「うん」

 笑える心情でもないのに笑みを浮かべている自分がなんだか滑稽に思えてくる。
らしくない行動に清美はいつの間にか本気で笑っていた。

「あ、そうそう、それでね。
今日、商店街のみんなが集る会合が開かれるんだけど、よかったら清美ちゃんもどうかなって思って」
「行く!」

 たとえ良人がリカコを好きだとしても、自分が良人を好きなことは止められない。
リカコのついでだとしても誘われたことが嬉しくて、清美は間髪入れずに返事をした。

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