お狐様が嫁になれと言い出しました 24
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≪ 第三章 人ならざる者たち 4 ≫



※※※


「リカの行きたがってた雑貨屋さんはどうだった?」

 無言になるのも嫌で、かといって何を話せばいいのかわからず、結局リカコのことを話題にしてしまう。
清美はそんな自分に呆れながらも、良人との二人きりの帰り道を楽しんでいた。

「そこにはお目あてのものがなかったみたいで、片平文具さんに行ったんだ。
そしたら気に入ったものがあったみたいだよ」

 良人が顔を綻ばせる。話を聞いている限りデートのような雰囲気だったらしい。
昨日、リカコの計画どおりになっていたら良人はこんな嬉しそうな顔で話してくれただろうか。
清美は、ツキンと痛む胸元へ手を置いた。

「あー、やめやめ。後ろ向きな考えなんて私らしくないぞ」

 どうにもさっきからマイナスなことばかり考えてしまう。
清美は立ち止まり、悪いほうへと向く思考を脳内から追い出そうと頭を左右に振った。

「どうしたの清美ちゃん、忘れ物?」

 自分が隣にいないことに気づいた良人がこちらを見ている。清美は謝りながら小走りで彼の隣へ移動した。

「ううん。違うの。楽しい時間ってあっという間に過ぎちゃうんだなぁって思ったら足が止まっちゃってさ」
「あーわかるよ。僕もそう思ってたんだ」
「えっ! 本当?」

 良人も自分との時間を惜しんでくれるのだろうか。期待で胸が高鳴る。

「うん。一人で帰るときは学校から結構距離あるって感じるんだけど誰かと話しながら帰ると早く感じるよね」
「あ、そ、そうだよね」

 良人の返答は自分の期待するようなものではなかった。清美はがっくりと肩を落とす。
 あからさまに石ころでも蹴ってやろうか。清美は手頃な石がないかと下を向く。
刹那、キラリと光るものが目に入った。

「何あれ」

 清美が口を開け見つめた先には、夕日に照らされた真鍮の懐中時計が逆さになった状態で右往左往していた。
丸い時計本体を三角形を作ったチェーンが支えている。
それは照る照る坊主の絵を描いたときの形によく似ていた。

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