お狐様が嫁になれと言い出しました 26
acworksさんによる写真ACからの写真

≪ 第三章 人ならざる者たち 6 ≫



「あ、ごめん。歩くの早かった?」

 少し先を歩いていた良人が立ち止まり振り返ってくる。清美は、愛想笑いを浮かべ良人の元へ駆け寄った。

「違うの。えっと、今の無理は、そう! 私だったら無理だなぁっていう無理。
あの置物を処分しないで飾ったままにしてあげるなんてさ。良人君は相変わらず優しいね」

 うまい言い訳が見つかり安堵する。だが、それは紛れもない本心でもあった。
 良人の優しさに自分は何度助けられたことか。清美は昔を思い出し、胸を熱くした。
恋慕をこめて良人を見つめると、彼は照れくさそうにはにかむ。

「いやーそんなことないよ」
「ううん。昔から良人君は優しかったよ。よく私がいじめられていると助けにきてくれたし。
それに野良猫とか野良犬とかも助けてあげてたよね?」
「そういえばそんなこともあったね。あの頃は犬猫以外にもスズメとかツバメも保護したなー。
そういえば、清美ちゃんの神社の近くでも助けたことがあったんだよ」
「え、そうなの?」
「うん。あれはたぶん……」

 もしかしてそれは狐だったりするのだろうか。だが狐の姿は普通の人間には見えないと言っていたはずだ。
 清美は内心で自身の考えを否定しながらも確信が持てず、良人の返答を緊張しながら待った。

「アライグマだよ。まだ小さかったから子供だと思うんだけど、可愛かったなー」
「……アライグマ?」
「うん。僕も野生のアライグマはあの時初めて見たんだけどさ。こんなところにもいるんだねアライグマって。
と言ってもあれ以来見てないんだけどね」
「そうなんだー。私も見たかったな」

 良人がくすりと肩をすくめる。清美は自分の杞憂だったことに、ほうっと息をついた。

一つ前を読む   小説の部屋に戻る   次を読む





オープニング背景画像:MICHYさんによる写真ACからの写真