お狐様が嫁になれと言い出しました 27
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≪ 第三章 人ならざる者たち 7 ≫



「やっぱり良人君は優しいね。
あ、それでさっきの話に戻るけど、会長さんは反対しなかったの? 狸を置いたままにすること」

 良人が、商店街の組合長をしている彼の祖父、佐藤一人(かずひと)に怒られてしまったのではないかと
心配になる。

「それがさ、結構乗り気だったんだよ。
なんか、商店街にもイメージキャラクターは必要だーとか言っちゃってさ」
「へーそうなんだ」
『清美様ー、お待ちください』

 このまま何事もなく帰れると思ったのもつかの間。
知らない振りをして通り過ぎたはずの懐中時計が後ろからついてきた。
振り返らないように気を配りながら後方を確認すると、三角形の底辺部分を使って器用に走る時計の姿が
見える。

(なんでついてくるのよ! ううん。それよりなんで私の名前を知ってるのよ?)
『清美様、後生でございます。お待ちくださいませー』

 時計の切なげな声が清美の足に絡まるように感じ、ついに罪悪感から足を止めてしまった。

「あー、もう! わかったわよ。良人君、ごめん。ちょっと寄るところできちゃったから先に行ってて」
「へ? あぁ。いいよ。会合は佐々野さんのところだからね」
「わかった。ありがとう」

 清美は目を丸くする良人へ手を振り、彼に気づかれないように懐中時計を拾いあげるときた道を戻った。

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