お狐様が嫁になれと言い出しました 33
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≪ 第三章 人ならざる者たち 13 ≫






「もう会合始まっちゃったかな」

 清美が小走りで商店街の通りへ戻ると、先に会合場所へ向かったはずの良人がリカコを連れて立っていた。

「あれ、清美ちゃんの用って一刻屋さんだったの?」
「えっ、あ、う、ん……」

 先に帰ったはずのリカコがなぜ商店街にいるのだろう。
しかも良人と一緒に。自分に内緒で落ち合う約束でもしていたのだろうか。
真相を知りたくても何から訊けばいいのかわからず、清美は良人とリカコの顔を交互に何度も見た。

「なんだ。それだったら最初から清美とくればよかった」
「え?」

 腰に手をあて、あっけらかんと言うリカコに清美は首をかしげる。

「田沼さん、一刻屋さんを探してたみたいでね。迷子になってたんだ」
「昨日行った文房具屋に寄ろうと思ったら、腕時計が止まってることに気づいたの」

 良人の説明を引き継ぐようにリカコが腕時計を見せてきた。
シンプルな文字盤の上を、秒針の先についた緑の葉が動かずに止まっている。
それは清美がリカコの誕生日プレゼントにと去年あげたものだった。

「清美が前に修理もしてくれる時計屋さんがあるって言ってたのを思い出したまではよかったんだけど、
場所までは知らなかったから商店街をさまよっていたってわけ。安心した?」

 リカコに図星をさされ、ドキリとした。
しかし、それを認めたくなくて彼女の視線から逃れるよう顔を逸らす。

「安心も何も、なんとも思ってないもん」
「そう?」

 逸らしたこちらの顔を追いかけるようにリカコが回りこんで仰ぎ見てきた。

「そ・う・よ!」

 明らかにからかいを含んだ目つきをするリカコへ、清美は一音ずつ言葉を区切った。
睨むようにリカコを見つめ、一瞬後、二人とも笑い出す。

「あっ、ねぇ。清美ちゃんも誘ったんだけど、田沼さんも会合にこない?」

 自分たちの会話が一段落したのを見計らうように良人が切り出した。

「え、でも、私商店街の人間じゃないし」

 自分に気を使っているのか、リカコはなかなか承諾しない。それどころかこちらをちらちらと窺い見ている。
こんな友達思いの親友のことをどうして疑ってしまったのだろう。
清美は自己嫌悪に陥りつつも、消沈した姿を見せないように元気に振る舞った。

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