お狐様が嫁になれと言い出しました 37
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≪ 第三章 人ならざる者たち 17 ≫






「本当に大丈夫? もしかして今日誘ったのも本当は嫌だったんじゃない?」

 良人が渋い顔でこちらを見る。

「えっ! そんなことないよ」
「だって会合中もずっとぼんやりしてたじゃないか」

 良人の責め立てるような物言いに、清美は必死で首を横に振った。

「違うの。私、ぼんやりしてたんじゃなくて考え事を」
「考え事? それって商店街の活性化についての?」

 良人の問い詰めに清美は何も言えなくなり俯く。頭上から大きなため息が聞こえ、肩が震えた。

「会合に誘っておいてなんだけどやる気がないならもう無理にこなくてもいいよ、清美ちゃん」

 いつもと違う良人の突き放すような固い声音に清美は顔をあげる。

「やる気がないなんて、そんなことない。私、私だって」

 目がぼやけ、声が震える。清美は溢れ出ようとする涙をこらえるため、奥歯をギュッと噛んだ。

「結局、君は何しに会合に参加したの?
無理やり参加させちゃったリカコちゃんのほうがすごく親身になってくれてたよ」
「ごめんなさい」

 頬を一滴の涙が流れる。

「じゃあさ、消えてよ」
「え?」

 日だまりのような暖かさを纏っていた良人の空気が暗く冷たいものへと変わる。
まるで人格そのものが入れ替わってしまったかのようだった。何が起きているのか。
思考が追いつかず固まる清美をよそに、良人がこちらの肩に手を置いた。

「悪いと思ったから謝ったんでしょう?」
「よ、良人君、ど、うしたの? なんか変だよ」

 優しく語りかける声とは裏腹に、良人の目にはなんの感情も映っていなかった。
何かに取り憑かれてしまったかのような変わりように清美は萎縮する。

「邪魔なんだよ。だからさ、消えてよ、清美ちゃん」

 清美の肩に置かれていた手がゆっくりと首へ移動してきた。引っこんでいた涙が恐怖で潤み出す。

「ど、う、して……」

 清美の首に触れている良人の手に力が加わっていく。
首が絞まれば絞まるほど、脈打つ鼓動が耳の奥で響いた。
清美がくぐもった声で問うと、良人は満面の笑みを浮かべた。

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