お狐様が嫁になれと言い出しました 49
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≪ 第四章 こじれる想い 8 ≫



(そんなふしだらなことを! まだわれだってされたことがないのだぞ!)

 天は、己の堪忍袋の緒が切れる音を聞いた。

「そなたは神のわれより好いた男の言葉を信じるというのか!」
「な、何言ってるのよ」

 震える指で清美をさすと、彼女は顔を真っ赤に染め慌て出す。

「へ? 神? 好いた男?」
「ち、違うの良人君。あのね」

 首をかたむける良人へ、さらに落ち着きをなくした清美がすがるようにくっついた。

「何が違う。われは嘘など言わん。清美はわれの言葉を信じずに、その好いた男を信じているではないか」
「えっ、好いた男って僕?」

 良人は目を丸くし、こちらと顔を俯かせた清美を何度も往復させながら見ている。

「……ん……こと……いう……なんて……」
「なんだ? われが違うておるのか? なればハッキリ言えばいい!」

 下を向きぼそぼそと呟く清美を一喝すると、少女はキッと怒りを露わに顔をあげた。

「最低! もうあんたの顔なんて見たくない!!」
「え、ちょ、え? ちょっと待ってよ清美ちゃん」

 走り去る清美を良人が追いかける。

(……われは清美を傷つけてしまったのか?)

 遠ざかる清美の背中を見て、天は初めてそのことに気がついた。
膨れて立ちあがっていた尻尾が力をなくし足の間に入りこむ。

『あんたの顔なんて見たくない!!』

 天の頭の中で、瞳に涙を滲ませながら言った清美の言葉がいつまでも木霊(こだま)した。

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