お狐様が嫁になれと言い出しました 54
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≪ 第五章 素直じゃない二人 5 ≫



『恋しい清美様が自分よりも恋敵を信じ、あまつさえその恋敵を守ろうとしたのですから
お狐様が嫉妬にかられ暴言を吐いてしまったのも無理はないかと』
「こ、恋しいって……」

 顔が火照る。真面目な口調で語る艶子に、今さらながら狐が自分へ好意を寄せていることを実感した。

「でも嫁になれとか言われても出会い頭とか、お祭りの交換条件とかだったし。
お狐様が私を想ってるっていうのはないよ、ない。うん」

 狐からの告白を思い返してみても、彼が本気で言っているようには見えなかった。
そもそも初対面の相手に突然告白されても戸惑うだけだ。

「それにまだ会ったばかりなのに恋しいっておかしくない?」
『まぁ! そんな瑣末なことを。人間の世界には一目惚れというものがあるではないですか。
それに清美様は初対面だと思われてもしかたありませんが、お狐様は違いますよ』
「そ、それはそうかもしれないけど……」

 艶子に平然と返され、清美は返事に窮した。
 狐の存在すら忘れてしまった自分のことを彼はどんな想いで見ていたのだろう。
片思いのつらさは自分が一番よくわかっている。その相手が別の誰かを見つめている切なさも。

(私何もしてないのに、どうしてお狐様はそこまで想ってくれるんだろう?)

 自分が覚えていないときに何かあったのだろうか。
いくら思い出そうとしても思い出すことのできない自分に清美は歯がゆさを感じた。

「っていうか、私の力ってどうして封印されてたの? 小さい頃はべったりだったんでしょう」

 一番の疑問はそこだ。
力を失えば狐のことなど見えなくなるとわかっていたはずなのに、どうしてそんな暴挙に出たのだろう。
清美が疑問を口にすると艶子がクスクスと可笑しそうに笑った。

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