お狐様が嫁になれと言い出しました 56
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≪ 第五章 素直じゃない二人 7 ≫



※※※


(どうしよう艶子さん黙りこんじゃった)
「ああ、やはりここだったか清美」

 艶子が何も言わなくなってしまってからしばらくの間。
狐の過去を問えるような雰囲気でもなく途方に暮れていると、孝一の声が聞こえてきた。

「お祖父ちゃんどうしたの?」

 孝一は何かを探しているのか、視線を四方へ向けながら近づいてくる。
 祖父の出現に、内に引きこもっていた艶子も戻ってきたようだ。
さっき感じた悲愴さは消えてなくなり、清美の知っているコケティッシュな顔へと戻っていた。

『あら孝一。お務めご苦労様』
「おや、艶子様がこちらへいらっしゃるとは珍しい」

 孝一はここに艶子がいるとは思っていなかったのか、一瞬目を見開いた。
それを見て艶子は含むような笑みを浮かべる。

『たまにはね。ところで何か用でも?』
「そうでした。清美、お狐様を見なかったか?」

 孝一は話しながらも、背伸びをしたり屈みこんでみたりとせわしなく体を動かし狐を探していた。

「お前を迎えに行くといって出て行ったきりまだ戻ってきてないようなんだが……」

 ここにいないことがわかったのか、孝一の動きがピタリと止まる。

「そうなの? どうしよう私が顔も見たくないとか言っちゃったせいかな」
「そんなことを言ったのかい? なんでまたそんなことに」

 明後日の方向を向いていた孝一が勢いよくこちらへ顔を向けてくる。
驚いた顔でまじまじと見つめてくる祖父へ、清美は艶子に聞かせた話を再び話し始めた。

「でもね、良人君には尻尾が生えてなかったんだよ」
『おや、最初からお狐様の言葉を疑っていたわけではなかったのですね』

 清美が新たに思い出したことを補足すると、艶子が嬉しそうに声を弾ませた。

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