お狐様が嫁になれと言い出しました 58
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≪ 第五章 素直じゃない二人 9 ≫






「お狐様! わしの口を勝手に使わんでください」

 清美の姿が見えなくなると、顔をしかめながら孝一がこちらを見る。
天は感心しながら、欅の大木の陰から出て、彼らの前に姿を現した。

「さすが、孝一だな。姿を隠したわれに気づくとは」
「おだてたって駄目ですよ、お狐様」
「おだててはおらん。褒めておるのだ。
それにしてもそなたは相変わらず憑依しやすいな。われだからいいものの気をつけよ」
「ごまかしたって駄目ですよ、お狐様」

 天は胡乱な目を向けてくる孝一の視線に耐え切れずそっぽを向いた。

「まぁ、今回はいいでしょう。それよりなぜ清美から隠れていたのですか?」

 孝一のもっともな疑問に天は口ごもる。
腕を組み明後日のほうを見ていると、艶子が呆れたと言わんばかりにため息をついた。

『そうですよ。
そんなところで隠れているくらいなら、ご自分で清美様をお慰めなさればよかったじゃないですか。
わざわざ私を呼びにきてまですることではないでしょうに、まったくほんとヘタレなんですから』
「なっ! 艶子、われを愚弄する気か?」
『愚弄などとんでもございません。わたくしは事実を言ったまでです』
「なお悪いではないか!」

 尻尾の毛を逆立て怒って見せても、艶子はどこ吹く風というように鼻で笑う。
この人形とは長いつき合いになるが言葉で勝てたためしがない。それでも負けを認めることが癪で、
天は歯噛みをしながら艶子を睨みつけた。

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