お狐様が嫁になれと言い出しました 6
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≪ 第一章 出会いは突然に 6 ≫



「そ、それにうちは稲荷神社だし、商売繁盛とか五穀豊穣にはもってこいじゃない」
「そういえば、最近駅にできたデパートのせいでお客さん取られたって佐々野さんが言ってたわね」

 母の園子が緩やかなウェーブのかかった肩よりも短い髪の毛を揺らしながら、席に座った清美の横に立った。
手にはまだ帰ってきていない父、一正(かずまさ)を除いた家族分のお茶をお盆に乗せている。

「ほら、やっぱりここはお祭りだよ。それで商店街を活気づけてあげようよ。いいでしょうお祖父ちゃん」
「うーん、お狐様に訊いてみないことにはなー」

 なぜここで神様の了承が必要なのか。清美は首をかしげる。

「お狐様関係ないじゃん。神主はお祖父ちゃんなんだから」
「あら清美ちゃん何言ってるの、お狐様はうちの神様なんだから関係ないはずはないでしょう」

 園子がコロコロと鈴が鳴るかのように笑った。

「もう、からかうのはやめてよ! 私は本気で言ってるんだからね」

 こちらは真剣に訊いたのに。清美は冗談にしようとする孝一と園子に腹を立てる。

「別に清美をからかってるわけではないんだよ」

 釈然としない祖父の態度に、苛立ちが増した。

「じゃあ、なんでお狐様に訊かなきゃなんて嘘つくのよ!」
「いや、まぁ、なんというか……その」

 孝一が煮え切らない態度をとる。そしてちらりと誕生席にある狐の置物へ視線をやった。
清美も祖父に釣られ顔を動かす。するとそこには、夕方に会ったばかりの変な中学生が満悦そうに
漆黒の杯に口をつけていた。ただあのときとは違い、雪雲色の着物を羽織っている少年の頭の上には
髪の毛と同じ毛で被われた大きな獣耳が生えていた。

「なんで?」

 目を大きく見開いたままでいる清美に気づいたのか、少年が三角に尖った耳をピンっと立たせて
こちらを向いた。

「ん? なんだ? われは祭りなど興味ないぞ」
「そうじゃなくて。いやそれもなんだけど、その前になんでここに?
ていうか何勝手に人の家で寛いじゃってるのよ!」

 清美は、ドキッとするようなキレイな笑みに見とれていたことをごまかし、音を立てて席を立った。

「あらあら、清美ちゃん食事中よ」

 不審者がいるのに驚きもしない園子に驚いていると、孝一が中学生に話しかけた。

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