お狐様が嫁になれと言い出しました 60
acworksさんによる写真ACからの写真

≪ 第五章 素直じゃない二人 11 ≫



「あのー、よろしいでしょうか」

 天がやるせない気持ちでいっぱいになっていると、今まで黙っていた孝一が申し訳なさそうな顔で
入ってくる。

「お二方のお話を察するに稲荷湯の小倅が今回の件に関わっているようなのですが……」
「あぁ。あやつはすでに狸の言いなりになっておった」

 孝一が入ってきたおかげで幾分空気が軽くなった。
天が眉間に皺を寄せ問いかけてきた孝一へ頷いて見せると、艶子が一時休戦とばかりに口を開く。

『では狸が良人とかいう人間に化けていたわけではないのですね? それなら尻尾が見えないのも当然ですね』
「あたり前だろう。あやつは人間なのだからな。デレデレとした顔で豆狸に化かせれておったぞ。
清美は、あんな容易に情報をもらす男のどこがいいのかのぅ」

 良人の隣ではにかみながら頬を染めた清美を思い出しイライラする。

「情報? それは! それはどんなものでしたか?」

 孝一が目を見開き、詰め寄ってくる。あまりの気迫に天は、仰け反りながらそれに応えた。

「よぉ覚えておらんが、亡くなった旦那が弱いとか時計を大切にしてるとかそんなふうだったぞ」
「……そうですか」

 求めていたものと違ったのか、孝一は肩を落としこちらから離れる。

『孝一、がっかりすることはないわ。
その情報を元に狸が化けて、店を乗っ取ろうとしていることは間違いないのだから』
「なんとっ! では今まで閉店してきた店もやはりこの手口で?」
『すべてとは言い切れないけれど、大部分は狸のせいだと思うわ』
「狸の……」

 艶子の推測に孝一はさらに消沈した。
きっと人ならざるものの力を前に打つ手なしとでも思っているのだろう。
今にも膝をついてしまいそうな孝一を不憫に思い、天は助言を与えた。

一つ前を読む   小説の部屋に戻る   次を読む





オープニング背景画像:MICHYさんによる写真ACからの写真