お狐様が嫁になれと言い出しました 61
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≪ 第五章 素直じゃない二人 12 ≫



「そう肩を落とすでない。次の標的がわかっているのだからこちらが先回りすればよいだけの話でないか」
『お言葉ですがお狐様。その先回りする店がわからないと話になりませんよ』
「そんなものはさっきわれが話した」

 天はいちいち茶々を入れてくる艶子にムッとしながらも言い返す。
しかし、それは艶子の堪忍袋の緒を切るには十分すぎる威力を持っていたようだ。
こちらの言葉を遮る形で艶子の怒声が飛んできた。

『あれのどこで察しろと言うのですか!』

 耳を伏せる間もなく聞かされた大きな声に天は頭をクラクラさせた。

「な、ならばあやつを、良人とかいう人の子を見張ればよいだろう。あやつは狸の手先なのだからな」
『それはお狐様自らがなさると受け取ってよいのですか?』

 艶子がこちらを窺うように見てくる。
天は言質を取ったとばかりにニマニマする艶子へ舌打ちをしたくなった。
彼女の企てに踊らされるのも癪だが、それ以外によい方法が見つかるわけもなく。
天はしぶしぶ首を縦に振った。

「……いたしかたあるまい」
「よろしいのですか?」
「われは何もしたくはないのだがな。そうも言ってはおられまい。それに清美はわれの嫁になるおなごだ。
あの娘が健やかに暮らせるようにするのが夫の務めなのだろう」

 天は目を見開き驚愕している孝一へ、ニヤリと笑って見せる。
先日、孝一の願いを切り捨てたのだから驚くのも無理はないだろう。孝一は目を潤ませてお辞儀をしてきた。

「清美のことをよろしくお願いいたします」
「ああ」

 天が横柄な態度で頷くと、孝一は思い出したように一言つけ足した。

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