お狐様が嫁になれと言い出しました 63
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≪ 第六章 明らかになる事実 1 ≫






 清美は朝から腹を立てていた。
 夕べのことは狐のほうが悪かったとしても、彼の言い分を頭ごなしに否定してしまった自分にも少なからず
責任はあるだろう。そう思い、狐が帰ってきたら謝ろうと決意したにも関わらず夕飯の時間になっても
彼は帰ってこなかった。それどころか今朝の朝ご飯の席にも座っていなかったのだ。

「なんなのよ、あいつ。せっかく謝ってあげようと思ったのに!」

 清美が乱暴気味に机の上へカバンを置くと、すでに登校していたリカコに話しかけられる。

「おはよう。どうしたの? 大きな声なんて出しちゃって」
「おはよう、リカ。なんでもない。ちょっとムカつくことがあっただけー」

 清美は、いつものように笑顔を見せてくるリカコからとっさに顔を逸らす。
良人の気持ちを知ってしまったせいで彼女と目線を合わせることが気まずかったのだ。
 どこを見るでもなく視線をさまよわせると、リカコの腕に時計がないことに気がついた。

「いつもあるものがないと変な感じだよね」

 じっと見ていたのに気づいたのか、リカコは何もついていない左手首をさすった。

「いつ直るって?」
「昨日にはできてたみたいなんだけど、ちょっと取りに行けなくって。仕事早いよね、あそこのお店」
「おじさんの修理は完璧だからねー」
「へー、そうなんだ。なら安心ね」

 もちろん、と太鼓判を押して笑うとリカコも一緒になって頬を緩める。

(よかった普通に話せそう)

 リカコと目が合っても大丈夫だったことに安堵していると背後から声がかかった。

「おはよう。清美ちゃんに田沼さん」
「おはよう。佐藤君」
「あっ、おはよう」

 登校してきた良人が手をあげこちらへ近づいてくる。
目が合うことをためらっているうちに良人は自分たちを追い抜かし男子グループのほうへ行ってしまった。

「何かあった?」

 リカコから探るような眼差しを向けられ、清美はドキリと鼓動を速める。
どうして彼女はこうも鋭いのだろうか。
清美は冷や汗に濡れた手をぎゅっと握りしめ、なんでもない素振りをした。

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