お狐様が嫁になれと言い出しました 64
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≪ 第六章 明らかになる事実 2 ≫



「へ? なんにもないよ。それよりさ、リカって好きな人いないよね?」

 ごまかそうと思って出した言葉に、清美は失敗したと思った。いくらなんでも唐突すぎたかもしれない。
案の定、リカコも訝しげ表情でこちらを見る。

「なーに急に……」
「いや、そんな話聞いたことなかったなーって思ってさ。ほらいつも私のことばっかだし……」

 こうなったら押し切ってしまえばいい。
清美は自分に言い聞かせながら言葉を続けたが、じっとこちらを見つめるリカコの大きな瞳に耐えきれず
ごにょごにょとはっきりしない声で濁した。両方の人さし指を合わせながら、ちらちらとリカコを窺い見る。
彼女はしかたないわね、と言わんばかりに肩をすくめた。

「いるわよ」
「えっ? 嘘」

 すぐさま反応したこちらの言葉にリカコは可笑しそうに笑う。

「嘘ついてどうするのよ」

 リカコは想い人のことでも思い出しているのか、遠くを見つめる。

「小さい頃にね、ケガをしちゃって助けてくれたの。
最初は名前も住所も知らなかったんだけど最近になってわかってね」

「うん、うんうん」

 顔色を変えることがめったにないリカコが珍しく頬を染める。
頬紅を塗ったように赤く色づく彼女の横顔を清美は興奮しながら眺めた。

「意外と近所に住んでるんだけど、まだお礼も言えてないんだ」

 清美は今まで聞いたことのなかった親友の恋バナに夢中になる。

「彼に恩返ししようと頑張ってるんだけどなかなか思うようにいかなくてね……」

 リカコが眉を寄せ悲しげな表情を作った。彼女の気持ちが伝染したかのように清美も一緒になって眉を
動かす。

「そうなんだ。それは大変だね」

 かける言葉が見つからずありきたりなことしか返せない自分に、リカコは朗らかに笑った。

「うん。だからね、清美。私の邪魔はしないと約束して」
「あったりまえじゃない!」

 応援することはあっても邪魔なんて絶対にしない。清美は心の中で決意しながら頷いて見せた。

「ふふふ、ありがとう」
「おーい、席に着けー! 授業始めるぞー」

 いつの間にか一時限が始まる時間になっていたらしい。意気揚々と担当教師が教室へと入ってきた。

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