お狐様が嫁になれと言い出しました 65
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≪ 第六章 明らかになる事実 3 ≫



※※※


 授業が始まり、教師が授業の説明をしながら黒板に文字を書く。
カツカツと緑の板にあたるチョークの音を耳にしながら清美はふと違和感を覚えた。
しかしそれがなんなのか、しばらくの間考えてみたがわからず。清美は諦めてノートに黒板の文字を
写し始めた。

(リカの好きな人かー。どんな人なんだろう)

 ノートに滑らしていた手を止め、親友の想い人を想像する。
ケガをしていたところを助けたというくらいだから良人のような優しい人なのだろうか。
自分も含め良人の失恋は決定してしまったが、彼女の恋は成就して欲しい。
清美はそんなことを考えながら、板書していたノートの端に相合い傘を書いた。

(それにしても、さっきのリカ可愛かったなぁ。あんなに顔を真っ赤にさせちゃって)

 リンゴのように顔を赤く染めたリカコを思い出し清美は口許を緩める。

「昨日の掃除当番は誰だ!」

 大きな声を発した教師の声に自分の考えに没頭していた清美は肩を震わせた。
バクバクした心臓をなだめながら前を向けば、教師が黒板消しを片手にクリーナの電源を入れている
ところだった。

「駄目じゃないか、黒板消しを綺麗にしておかないと」

 掃除機によく似た、汚れを吸いこむクリーナーの音が教室中に響き渡る。

(まただ。またなんか変な感じ)

 さっきからなんなのだろう。何か物足りないと感じてしまう自分に、清美は首をひねった。

「今度からはちゃんとやっておけよ」
(あっ!)

 苦笑まじりに生徒へ視線を向ける教師の手元を見て気がついた。

(そうだ! 黒板消しが笑わなかったんだ)

 なぜ気づかなかったのだろう。身を捩りながら大声で笑う黒板消しの声が聞こえてこなかった。
最初に感じた違和感もこれだ。

(昨日は聞こえたのになんで?)

 狐のことで頭がいっぱいだったから覚えていないが、朝から聞こえなかったのだろうか。
耳をすましてみても授業を続ける教師の声と教科書をめくる音しか聞こえてこない。
数日前までそれがあたりまえのはずだったのに。
清美は人ならざるものたちの声が聞こえないことに胸騒ぎを覚えた。

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