お狐様が嫁になれと言い出しました 69
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≪ 第六章 明らかになる事実 7 ≫



「私の幻術を破ったのは褒めてあげてもいいけど、大方その懐中時計に助けて貰ったってとこかしら?」
「そ、それがあんたになんの関係があるって言うのよ!
そんなことよりも早くリカに化けるのをやめなさいよ」

 飲みこまれたら負けだ。きっと自分を化かそうとしているに違いない。
清美は冷静になれと心中で言い聞かせながら狸と対峙した。

「あははは。清美ったらまだ気づいてないの? 私は何にも化けてないわ」

 清美は狸が可笑しそうに笑いながら漏らした言葉の意味がわからず、首をひねった。

『清美様、あのメス狸は化けておりません。あれがあやつの人型のようですよ』
「は? 何言ってるの?」

 時計にわかりやすく説明されても清美には理解できなかった。
いや言葉の意味はわかっていたのだが脳が理解することを拒んだのだ。

「ふふふ。信じられないって顔ね。まぁ、ムリもないわよね。
親友が人間じゃないなんて普通は思わないものね」
「……本当にリカなの?」
「そうよ。清美の親友、田沼リカコよ」
『な、なんと! それは真でございますか、清美様』
「わかんないよ。だって見た目はリカそっくりなんだもん。でも狸は化けるのが得意なんでしょう」

 確かなことが知りたくて、清美は時計をギュッと握りしめながら揺すった。

『き、清美様落ち着いてくださいませ。そ、それよりもまずは十和子様です』
「あ、ごめん。そうだよね」

 清美は時計から視線外し、狸をキッと睨んだ。

「そこのリカに化けてる狸! 早く十和子おばあちゃんとその茶封筒を渡しなさい」
「もううるさいわね。そんな大きな声を出さなくても聞こえてるわよ」

 狸はわざらしく両耳を指で塞ぐような仕草をしたあと、ちらりと十和子と対面している狸へ視線を向けた。
子分なのだろうか、前店主に化けている狸は黙ったまま頷くと十和子を伴って居住区へ繋がるドアから店を
出ようとする。

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