お狐様が嫁になれと言い出しました 7
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≪ 第一章 出会いは突然に 7 ≫



「お狐様、まだ誕生日ではありませんぞ」
「固いことを言うな、それに明日突然見え始めるのも困るだろう」
「まぁ、それもそうですが」

 しぶしぶ納得する孝一の横合いから愛想のいい正子の声が聞こえてきた。

「お狐様お久しぶりでございます。またお狐様のお姿を見られることができるなんて」

 正子までもが嬉しそうに、そして懐かしそうに少年に向かって微笑んだ。
清美は何がなんだかまったく理解できず、呆然とする。
 自分一人が蚊帳の外にいる中、楽しそうに話が盛りあがっていった。

「わしはずっとお主のそばにいたのだがな、姿を見せると孝一がヤキモチをやいての」
「お狐様!」
「よいではないか。本当のことだろうに」

 少年が大の大人である孝一をからかっている。明らかに不自然な状況だが家族は何も言わない。
それどころか、進んで混ざっていることに清美は目眩を覚えた。

「お義母様はお狐様のファンですものね」
「あらやだ、園子さんったら」

 園子の指摘へ正子は少女のように頬を赤らめる。それを見ていた孝一がわなわなと肩を震わせた。

「まぁーちゃん、わしという者がいながら浮気なのか」
「な、ちょ、えっ、どういうことよ、お祖父ちゃん!」

 大声で喚く清美の声で我に返ったようだ。
孝一はわざとらしく咳払いをすると姿勢を正し、少年のほうへ右手をかたむけた。

「あーそうだった。清美、こちらにいらっしゃるお方こそ、我が小笠原神社が代々の崇めているお狐様だ」

 孝一に紹介された中学生が笑いかけてくる。

「お前も明日になれば十六歳だ。十六ともなれば嫁に行くことだって可能になる。
だからそろそろお前にもお狐様の存在を知っていて欲しくてな。
本来ならば誕生日を迎える明朝に挨拶をさせようと思っていたのだが……」

 驚きすぎて息を止めていたのかもしれない。すらすらと話す孝一の声が、だんだんと小さくなっていく。
そして、ぐにゃりと視界が歪んだと思った矢先、意識がとぎれた。

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