お狐様が嫁になれと言い出しました 71
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≪ 第六章 明らかになる事実 9 ≫



「なんで、なんでこんなことしたのよ!」
「うるさいわね。私の邪魔をしたからに決まってるじゃない。
清美、なんならあんたもここで消してあげようか?」

 こんな自分本位なリカコは見たことがない。
清美の知っているリカコは思いやりがあって、自分に厳しいけど弱者には甘く、温かみのある人間だった
はずだ。罪悪感のかけらも抱いていない彼女の物言いに清美は愕然とした。

「なんでそんな、だって商店街をなくさないようしようって。一緒にイベントしようって言ったじゃない」
「なくしはしないわよ。駅の中にあるデパートへ移転するだけよ」
「そんなの商店街じゃないよ。ねぇ、リカ何か理由があるなら話してよ」

 すがりつくように近づくが、リカコははたくようにこちらの手を振り払った。

「あーもう本当嫌になる。私あんたのそういうところ大っ嫌い」

 リカコがイライラと声を荒げ睨んでくる。

「リ、リカ……」

 気の合う親友だと思っているのは自分だけで、彼女は笑みを浮かべていた裏でずっと憎悪のこもった
冷たく尖った眼差しを向けていたのだろうか。
清美は何かが足元からガラガラと音を立てて崩れていくのがわかった。

「ちょうどいいわ。今度邪魔したらただじゃすまさないって前に忠告したわよね?」

 何かを吹っ切ったようにリカコがそばへくる。

「えっ、ちょ、何するの、リカ! ねぇってば!」
「前回みたく助けなんてこないわよ。結界が施されているからあの狐だって気がつかないだろうしね」

 見慣れたリカコの笑みのはずなのに、まったく違ったものに見え清美は怯えた。
丸くて少し潤んでいる茶色の瞳には剣呑さが残っている。

「な、なんでお狐様のこと知ってるのよ」

 清美は距離の縮まる彼女から離れたくて後ろへ下がった。

「バカね、清美。私は狸のあやかしなのよ。あの狐のことを知らないはずないじゃない」

 呆れたようなリカコの声音に清美は悔しくなり唇を噛む。

「狐も哀れよね。清美のために動いていたのに、とうの本人がそれを知らず狐を邪険にするんだから」
「どういうことよ」

 追い討ちをかけるように言葉を重ねたリカコの声に反応し顔をあげれば、彼女はさも愉しそうにあざ笑った。

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