晩春の夜風に薫る記憶は 23
キイロイトリさんによる写真ACからの写真

≪ 第二章 おしゃなりさま 11 ≫



「ん? 何かやってるのかな?」
「ああ、すぐ先に市場があるんです。
鮮魚だけじゃなくて、乾物とか日用品なんかも売っているんですよ」
「あ、それじゃあコンビニもあるかな?」
「なんですか? それ」
「へ? あー……、見たことないですか? 日用品や本、飲み物、食べ物、
なんでも揃う、二十四時間営業の店なんですが……」


 かい摘んで説明すると、千代が黙って頭を横に振る。


「そうか。ない場所もあるんだ……」


 頬を掻いていると、市場が見えてきた。

 木でできた軒の下に、
朝獲(あさど)れだろう鯵や胡麻鯖(ごまさば)などが並べられている。

さすが漁村だな、と内心で感嘆したが、少しだけ違和感があった。


(あれ? 酷い雨だったのに魚なんて獲れるのか?)


 明け方が豪雨だったのだとすると、海も相当荒れたのではないだろうか。

首をかしげつつ市場を見やると、
昆布やわかめ、魚の粕漬、漬物などを置いているのも見えてくる。

所狭しと並ぶ店を見て楽しんでいると、一際強い潮の香りが鼻を刺激した。

香りにつられて前方へ目を向ける。

眼前に碧々とした海が見え、浮かんでいた疑念も一気に吹っ飛んだ。

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オープニング背景画像:ぺるみけさんによる写真ACからの写真