晩春の夜風に薫る記憶は 27
キイロイトリさんによる写真ACからの写真

≪ 第二章 おしゃなりさま 15 ≫



「だから村の人々は『キヨメ様』を恐れて祭りが行われるこの時期、
夜出歩く時は性別を変えて己を消すんです」


 口を閉ざし俯く千代の姿は痛々しく、真人はかけるべき言葉を見失う。


「なんだか、誰かが仕組んだゲームみたいな話だな」


 ぽつりと呟くと、俯いていた二人が怪訝そうに見つめてきた。


「誰かが人殺しのゲームを思いつく。
そして村という小さな箱庭の中の殺人ゲームを、遥か上空から楽しげに見ている……。
上手く言えないけどそんな感じがするんです。貴女がたの祭りには」


 言葉を探しながら慎重に答えると、千代が弱々しく微笑する。


「そうね。変ですよね、やっぱり。
そうまでして行う祭りなんて、間違っているのかもしれませんね」


 真人たちはそれきり黙り込み、一様に海を見つめた。柔らかな風が潮の香りを運びつつ、
千代の黒髪を揺らす。

陽の光は暖かく、波の音も優しい。

カモメの鳴き声につられて空を仰ぎ見れば、雲が風に散らされて、
澄んだ青が広がっている。

そんな、どこまでも穏やかな五月晴れが、なぜか恨めしく感じられた。

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オープニング背景画像:ぺるみけさんによる写真ACからの写真