晩春の夜風に薫る記憶は 28
キイロイトリさんによる写真ACからの写真

≪ 第三章 夜祭り 1 ≫






 屋敷に帰って昼食を摂る。

することもなく庭を眺めていると、千代が祭りの概要について話しにきた。


「とりあえず、これから三日間何がなんでも生き延びてください」


 開口一番にそう告げられ、真人は返事に窮する。

生唾を呑み込んでいると、千代が沈痛な面持ちで頭を下げてきた。


「申し訳ございません。でも、それ以外に言いようがなくて」
「いえ、ある程度は覚悟しているつもりですから。説明、続けてください」


 必死で笑みを作り千代を促したが、
心に込み上げてくる恐怖は、なかなか去ってはくれなさそうだった。

探るような目で見てくる千代が、頷いて口を開く。

「祭りは三日間行われます。一日目と二日目は、
巫女様に大きな水晶玉を二つ抱えて『キヨメ様』から逃げていただきます。
そして、逃げながらこの村の辻にある像を清めていただくのです」


 千代の話に真人は首をかしげた。


「清めるって、具体的にはどうすればいいんですか?」


 問うと、千代が口許を綻ばせる。


「お水を像にかけて、御幣を立ててください。それらの用意は私がいたしますから」


 はあ、と曖昧に頷く間にも、千代の話が続いた。

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オープニング背景画像:ぺるみけさんによる写真ACからの写真