紅いお花はどんな味? 58
たかやんさんさんによる写真ACからの写真

≪  第五章 悲しみの上手な断ち切り方 13 ≫



『裕紀……、あなた。そうだったのね……』


 茫然とした様子で呟く絵里奈の姿は、全身が女裕紀、京理と瓜二つである。


「絵里奈!」


 尻餅をつき悲痛な声で叫ぶ裕紀を、絵里奈が悲しげな瞳で見おろした。


「絵里奈さん? なぜ?」


 どうして同化せずにでてきたのだろう。

状況が掴めず絵里奈を見ると、絵里奈が視線を向けてきた。


『……時間がないわ。裕紀、あの方、いえ、スレヴィ兄さんをお願い。栞さん、一緒に来て』


 感情の読めない口調で用件だけを告げてくる絵里奈に、栞は眉間へ皺を寄せる。


「絵里奈さん? いったい何を?」


 尋ねると、絵里奈が一瞥してきた。


「あなたと同化するわ。だから成功したら、すぐに私をあのカプセルの中へ」

「絵里奈さん! でもそれって!」


 成功したとしても今度こそ絵里奈の意識が完全に消えてしまうかもしれない。

よしんば残ったとしても、今よりもずっと小さな存在になってしまうだろう。

そんな無謀な賭けは承諾できない。

何より裕紀の気持ちを考えると、そんなことを許すわけにはいかないだろう。

栞は非難を込めて絵里奈を見あげるが、彼女の決意は固かった。


「どうしてもやるの?」

『ええ、やるわ』

「でもあなたには……」


 裕紀がいる、と言外に想いを込めるも、絵里奈が首を左右に振った。


『これはあたしにしかできないの。栞さん、お願い。一緒に来てくれる?』


 一歩も引かない絵里奈の表情が京理のそれと重なって、栞は溜め息を吐く。

親友そっくりの人間にそんな顔をされたら逆らえるはずがない。


「わかったわ」


 しぶしぶ頷くと、ありがとう、と絵里奈が微苦笑した。

栞は目を閉ざしもう一度絵里奈との同化を試みる。

今回はなんの抵抗もないまま意識が重なり合った。


「行くわよ!」


 栞は自身の中にいる絵里奈へ声をかけ、カプセルへ走りだす。


「おおっと。そうはさせないよ」


 木崎が装置のある場所から下へおりてきて眼前に立ちふさがった。

力づくで突破しようと構えると、後方から裕紀の声がする。


「お前の相手は俺だよ、スレヴィ」


 裕紀がこちらを庇うように木崎との間へ割って入る。


「ふん。ダイヤモンドを取られ防御もできない君に何ができるかな?」

「やってみなければわからないさ」


 挑発を含んだ木崎の問いかけに、裕紀も軽口で応じた。

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