紅いお花はどんな味? 8
たかやんさんさんによる写真ACからの写真

≪ 第一章 紅い花 8 ≫



「わ……、わかったから、あんまり顔近づけないでくれる?」


 熱くなる頬を悟られぬよう顔を背けながら手で彼の顔を押し退けると、裕紀が心底不思議そうに問いかけてくる。


「なぜですか?」


 自覚がないのは重々承知しているが、対処に困るのだ。

栞は溜め息を吐き、話を畳む。


「いろいろ心臓に悪いからよ。そんなことより、あんた、あいかわらずカラコンなのね」


 無理やり話題を転換させると、裕紀が目をしばたたいた。


「え? あ、はい」


 目に手をあて頷く裕紀の瞳を栞は見つめる。


「そのままのほうがいいのに」


 裕紀の瞳は本来澄んだ空色だ。

隠す必要もないのでは、と正直な感想を口にすると、裕紀が苦笑する。


「目立ちますから」

「そこまで隠すなら髪も染めれば?」


 軽く流そうとしてくる裕紀へ提案すると、彼が困ったように眉根を寄せ伸びた前髪を一房掴んだ。


「試してみたことはあるんですが、染まりが弱くてすぐ逆さプリンみたいになっちゃうんですよ」

「ああ、そっか」


 どのみちこの容姿だ。

下手に隠して悪目立ちするよりはましかもしれない。

一人頷いていると、裕紀がまた歩きだす。

慌てて追いかけると、ほどなくしてガラス張りのシックな雰囲気の店が見えてきた。

一つ前を読む    小説の部屋に戻る   次を読む





オープニング背景画像:魔女さんによる写真ACからの写真