邪魂撲滅委員会 10
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≪ 第二章 魂護衛課第五班(たまごかけごはん) 7 ≫



「ほれ見ろ。お上自身がクレアちゃんの服装を褒めておる」


 にたにたと笑っている福留が、うっとうしい。


「あっそ、良かったな。ってなんだよその手」


 顔の前に出された彼の手を、神は訝しく思う。


「わしが言ったとおりになっただろう。それにお前さんの勘違いで偉い目に合いそうになったし。慰謝料だと思って、ほれ」


 鼻へくっつけるかのように近づいてくる福留の手を、神は邪険に払った。


「はっ、何言ってやがんだ、クソジジィ。賭けてもねーのに勝ち負けがあるわけないだろう。

それにさっきのは、ジジィだってわからなかったじゃねーか!」

「はて? なんのことだか。最近とみに物覚えが悪くなってな」


 福留が首の後ろをさすりながら、首を傾げる。しかし、彼の黒い瞳が笑っていることに、神は気づいていた。


「とぼけてんじゃねーよ。大体テメーはいつも都合が悪くなるとそうやって忘れた振りしやがって」


 飄々(ひょうひょう)とした表情の福留にあきれていると、セルシオンが静かに近づいてきた。


「君たちはいつも仲が良くて非常に素敵だ。

しかし、私への挨拶もなしにその仲が良いことをアピールするのはいかがなものだろうか?」


 さもここが自分の椅子であるかのように、セルシオンが神の膝の上へ横向きに座ってくる。

そして朗らかな笑みをこちらへ向けてきた。


「これはお上……いや、セルシオン殿申しわけなかった」


 セルシオンの行動を察していたのか、福留はさほど驚いた様子を見せなかった。

ただ、どこか気まずそうに、ポリポリと頬を掻いている。


「貴殿と神はいつも仲が良い。私はジェラシーすら感じますよ」


 言葉とは裏腹に、セルシオンは造形の整った人形のような笑みを浮かべている。

だが、そんなものにみとれる者は誰一人としていない。むしろ自分などは、全身に鳥肌が立ってしまうほどだ。


「どうでもいいが、なんでテメーはここに座ってるんだよ! どきやがれ!」


 膝の上からどこうとしないセルシオンをどかせるため、交互に足踏みをする。

だが彼は、なぜか楽しそうな笑い声まであげてきた。


「まぁまぁ、たまには良いではないか」

「良くねぇーっての! しかもたまにじゃねー、毎回だろうがっ!」

「なんだい、神。そんなに私が座ることを望んでいてくれたのかい? うれしいことを言ってくれる」

「だぁー、テメーわざと話を合わせないようにしてるだろう?」


 神は話の通じないセルシオンに苛立ちを募らせる。

だが、暖簾に腕押し、糠に釘なこの天上人には何も通じていないようだった。


「時に神、『君は仕事をする私』をどう思う?」

「わけわかんねーことを次から次へとほざくんじゃねぇ」


 大声を出し続け息が切れ、呼吸が荒くなる。


「まったく、神の我が侭にも困ったものだね」


 手がつけられないと言わんばかりにセルシオンが深いため息をついてくる。

しかしその顔は、どう見ても困ったようには見えなかった。それが余計、癪に触る。


「我が侭はどっちだ! なんでもいいからさっさとどきやがれっ!」


 先ほどよりもさらに大きな声を出し、ガタガタと膝を揺らした。それでも彼が落ちる気配はない。

それどころかセルシオンは、落とされないよう首にしがみつこうとまでしてきた。

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