邪魂撲滅委員会 13
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≪ 第二章 魂護衛課第五班(たまごかけごはん) 10 ≫



「では、神。今回も美しい私のために早く任務を完了しておくれ」

「はん、誰がお前のために行くかっ。オレはオレの意志で行くんだ。アンタの指図は受けねーよ」


 神はあげていた手を下ろし、胸ポケットから取り出した手帳にファイルを挿んだ。

この手帳に紙を挿むだけで、そこに書かれている情報がすべて手帳に写る。

しかも天上地へと送った案件は、魂が天上地へ到着すると同時に削除されるという不思議な代物だ。

クレアの持つノートに至っては、最小限の個人データのみが写し出される自分のメモ帳とは違い、

さまざまな機能がついているらしい。どんな仕組みなのか、自分にはさっぱりわからない。

だが、便利だし重宝するから、そういうものだと思って神は気にもせず使っている。


「そんじゃま、ボチボチ行ってくるかな」


 立ちあがるこちらを阻むように、セルシオンが満面の笑みを浮かべ立ちふさがった。


「その前に神、今日は君にプレゼントがあるんだ」


セルシオンの不気味なまでに整った笑顔を見て、神は眉を寄せる。

だが、彼は気にするふうでもなく得意気な顔で、ポケットから何かを取り出した。


「なんだこれ?」


 目の前に、こぶし大くらいの白い綿でできている塊(かたまり)を突き出された。正体不明のそれに、神は首を傾げる。


「これは、蜘蛛の糸電話と言って、緊急時の連絡に使うものだよ」

何それ、なんか可愛い感じ」


 クレアがいつの間にか自席を離れ、こちらに近づいてきていた。セルシオンと自分の間に割り込む形で立つ。

セルシオンの手の中にある物体に興味があるようだ。この中では一番背が低いにも関わらず、

クレアは身を乗り出すようにしてそれを見ている。


(綿を雲と見立てて、蜘蛛の形にしたのか。って駄洒落か何かかよ)


 神もセルシオンの手にあるものを探るように見ていると、彼はさらに手をこちらへと近づけてきた。

だがどうしても何かを企んでいそうで、素直に受け取ることできない。


そんなおもちゃみてーなもん、いらねーよ」

「そんなことはない。それに神が私に言ったのだよ。邪魂を捕縛するときに連絡が取れないのは不便だって」


 その言葉は覚えていた。福留の情報とクレアの計算から割り出される邪魂を取り逃がしたことは、今のところない。

だからと言って、これからもそうだとは限らないだろう。そんなとき捕縛担当の自分が彼らと連絡が取れないのは困る。

邪魂を取り逃がしてしまう可能性だって出てくるかもしれないからだ。


「すべてにおいて秀でている、この私自ら作ったものだ。安心したまえ」


 その言葉自体が信用できない。セルシオンへそう言ってやっても良かったのだが、どうせ彼は引かないに決まっている。


(ただでさえ、うざったいんだ。これ以上かまってられるか)


 神は仕方なく、それを受け取ろうと手を伸ばした。

しかし、セルシオンの手の中にあった物は、すでにクレアが奪い取っていたらしい。

神はあげた右手をどうすることもできずに、そのまま固まってしまった。


「ふふふ、美しい私を取り合うのは仕方のないことだよ。罪な私がいけないのだから気にすることはないさ」


 セルシオンが、ウィンクをこちらに送りながら自慢の髪を払った。

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