恋に落ちた瞬間(とき) 28
とちぎさんによる写真ACからの写真

≪ 二、長い付き合いになる人たちとの出会い 21 ≫



「あのー、予約している岡部ですけど」
「そうだった。申しわけありません。岡部様でございますね。
お連れ様はすでにいらっしゃっていますのでご案内いたします」

 言うや、公子を先導するように歩き出す。
その際、一正がこちらを見ているのがわかった。
なんだろうと首をかしげると、彼が肩を竦め口パクでごめんね、と告げてくる。
園子は、はにかみながら首を左右に振った。

「やっぱりいい感じに見えるんですけどー」

 公子が、一正に案内される道すがら小声でからかってきた。
園子は朝と同じことを繰り返す。

「公子の勘違いよ。聞いてたでしょう。お互いの名前だって今知ったんだよ」
「それはそうだけどぉー、醸しだされる空気がさぁー」

 なおも続ける公子に園子は口を一文字にしてじっと彼女を見た。
こちらの視線に公子がうろたえ始める。

「べ、別にからかってるわけじゃないからね。本当にそう見えただけって話。
本当だよ? 他意はないってば」

 先頭を歩いていた一正が突然立ちどまり振り返ってきた。
こんなに近くにいるのだから今まで会話が聞こえていたのだろう。
園子は羞恥で顔が熱くなった。
だが彼は何も聞いていなかったのか、扉を手で示し告げてくる。

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