晩春の夜風に薫る記憶は 60
キイロイトリさんによる写真ACからの写真

≪ 第四章 運命(さだめ)よりも 16 ≫



「すべてはもう遅い。全部決まっていることなんですよ、真人様」


 信二は静かな口調で告げてくる。

真人は信二の答えに激しく首を横に振った。


「違いますね。決まっていると決めつけたのは、貴方がただ」


 薄暗い中話し出す相手に、真人はきっぱり宣言してやる。

だが、そんな言葉を信二が一蹴した。


「よしんば貴方の言う通りだとして、だからどうだと言うんです?
俺たちは先祖代々こうやって祭りを行いながら生きてきたんだ」


 自分たちの歴史に傷をつけるのは許さない。

信二の言葉からはそんな思いが伝わってくる。

それでも彼の主張を受け入れるわけにはいかないと、真人は信二を見上げた。


「それが決めつけだと言うんです。いいですか?
この祭りは歪んでいるんですよ。歪んだ祭りは元の在るべき姿に戻さなくちゃならない」


 睨み据えたまま語ると、信二が嘲るように笑う。


「外者(そともの)の貴方に、祭りが歪んでいるなんてことがなぜわかるんです?」
「勘です」


 言い切ってやると、信二が瞠目した。

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