晩春の夜風に薫る記憶は 62
キイロイトリさんによる写真ACからの写真

≪ 第四章 運命(さだめ)よりも 18 ≫



「わかりました」
「村長!」


 吉隆の言葉に信二が異を唱える。

だが、吉隆はそんな信二を目で制した。


「良いのだ、信二。皆の者も、真人殿を解放しなさい」


 吉隆の言葉で、男がしぶしぶといった風情で鍵を開ける。

自由を取り戻した真人は、全身を軽く叩いた後一礼した。


「ありがとうございます」
「信じてよろしいのですな?」


 顔を上げると、吉隆が厳しい視線を送ってくる。

真人は吉隆の探るような瞳を見返し、深々と首肯した。


「はい」


 返事に満足したのだろうか。吉隆の口許が僅かに緩む。


「では、私どもも貴方様に協力いたしましょう。
必要なものやわからないことがございましたら、なんでも言っていただきたい」


 はい、と真人は今一度頷く。


「わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」


 再度礼を述べると、吉隆の深く重い溜め息が耳に届いた。

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