晩春の夜風に薫る記憶は 63
キイロイトリさんによる写真ACからの写真

≪ 第四章 運命(さだめ)よりも 19 ≫






 二日目の夜がやってきた。

 真人は昨夜と同じ装束を来て、屋敷の外へ出る。

清めの水と御幣の束がしっかり帯に括りつけられていることを確認し、
ゆっくりとした動作で水晶玉を手に持った。


「さて、行くか」


 ひとりごちて足を踏み出すと、待ってください、と背後から声がかかる。


(やっぱりか)


 内心で舌を打ちつつ振り返る。

そこには案の定燕尾服姿の千代と、同じく白装束姿の信二が立っていた。


「私も行きます」


 千代が一歩進み出て宣言してくる。


「駄目ですよ。貴女が来たんじゃ意味がない。
信二さんも、納得してくれたんじゃなかったんですか?」


 呆れ気味に尋ねると、信二が皮肉げな笑みを浮かべた。


「お嬢さんがどうしてもと言って聞かないもんでね。
それに、あんたが逃げ出さないとも限らない」


 真人は、強い瞳で見据えてくる信二に、なるほど、と首を縦に振る。


「信用できないのはもっともですけどね。けど、千代さんを連れていくのは
承知できません」


 信二の目をしかと受け止めながら、真人も重ねて主張した。

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オープニング背景画像:ぺるみけさんによる写真ACからの写真