晩春の夜風に薫る記憶は 65
キイロイトリさんによる写真ACからの写真

≪ 第四章 運命(さだめ)よりも 21 ≫



(歩きにくい……)


 絡みつく白絹に一人苦戦していると、千代が後方から声をかけてくる。


「やはり、慣れませんか?」
「いや。はあ、まあ」


 立ち止まって振り返り、頭へ手をやりながら曖昧に頷いた。

すると、千代が進み出ておもむろに手を取ってくる。


「ずっとつけていらっしゃるんですね、この腕輪」
「え? ああ、まあ、護身用といいますか」


 腕輪を見やり答えると、千代が歩み出しながら言葉を紡いだ。


「私、今日少し調べてみたんですが、この村には虹色に輝く腕輪の
伝承があるんです」


 千代の言葉に真人は興味をそそられる。

急いで千代の隣に並び、問いかけた。


「それってどういう話なんですか?」


 千代が緩く口許を綻ばせる。


「私も子供向けの本で確認しただけなんですが。
なんでも五月祭で虹色の腕輪が現れると、村に真実の平安が訪れるんだとか」


 千代の言葉に真人は目を見開いた。


「それには、どのように使うとか書いてませんでしたか?」


 問うと、千代が小首をかしげる。


「確か、崖の上から掲げるんだったかと。
ただその話には、赤ん坊も水晶玉も出てきてはいませんでしたから、
子供向けに創作されたただのお話なのかもしれませんが」
「そうですか」


 千代の話に真人は力強く頷いた。

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