晩春の夜風に薫る記憶は 67
キイロイトリさんによる写真ACからの写真

≪ 第四章 運命(さだめ)よりも 23 ≫



「けど!」
「あんたが行くほうが、却ってお嬢さんを危険に晒すことになるんですよ」
「そんな」


 信二の言葉に眉根を寄せ、前方へ目をやった。


「あ……」


 真人は低く声を漏らす。

そこには、『キヨメ』の攻撃を白いステッキで優雅に受け流している、
千代の姿があった。


「せい!」


 千代が鋭いかけ声とともに、『キヨメ』の右腕を衝く。

鈍い声が辺りに響き渡り、『キヨメ』の身体が後ろへと飛んだ。


「すげ……」


 真人は茫然と呟く。

千代が昏倒しているらしい『キヨメ』から包丁を回収し、戻ってきた。


「強かったんですね」


 汗一つ掻いないその様に唖然としつつ声をかけると、千代が苦笑した。


「殿方はか弱い女性のほうがお好きですものね」

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オープニング背景画像:ぺるみけさんによる写真ACからの写真